運動時の繰り返しの動作によって生じるお悩みを総称して『スポーツ障害』と言います。
よくみられるスポーツ障害には、
〇野球肩・野球肘
〇腰椎分離症
〇オスグット病(膝下の痛み)
〇セーバー病(かかとの痛み)
〇有痛性外形骨(足の内側の痛み)
〇シンスプリント(疲労性骨膜炎)
などがあります。
これらは現行する競技の中で、反復されやすい特定の動作(野球であれば投球動作、サッカーであればキック動作など)を何度も繰り返すうちに、成長期でまだ骨の強度が十分でない部位に過剰なストレスが加わることで発生します。
しかし、骨格・筋肉・靭帯などの強度や柔軟性、フォームなどは選手個人によって異なるため、同じ年代で同じスポーツを同じ量だけ行なっていても、お悩みが生じる方とそうでない方がいます。
スポーツをしている成長期のお子さんが膝を痛がっている時、お悩みの原因は膝だけではなく、太ももやお尻の筋肉の柔軟性の低下や、不良姿勢などが原因になっていることがあります。
また、よく話を伺ってみると運動前のウォーミングアップの不足が一つの原因として考えられるような場合もあります。
このようにスポーツ障害の原因は様々で、施術を行う際には痛みがある箇所だけに目を向けてしまうと、根本的な原因を見逃してしまうことになります。
ただし、使いすぎ(over use)が痛みの引き金となっている場合が多いため、まずは数週間の休養をとりながら、適切な患部のケア、柔軟性の獲得やフォームの修正を行なうと予後は良好であるケースがほとんどです。
スポーツ障害による弊害は後になって現れる
上記のように、スポーツ障害は休養と適切な施術を継続することで予後は良好である場合がほとんどです。
しかし、いまだスポーツ界に根強く残る『根性論』やそれを美化する風潮、そしてスポーツ障害に対して知識・理解がない方の誤った指導によって、本来ケアが必要である選手たちは痛みに耐えながら無理をして運動を続けてしまう場合があります。
成長期で回復力の高い子供たちは、多少痛みが残っていてもいずれ痛みは自然とおさまり、何事もなかったかのように感じることもあります。
しかし、そういった時こそ注意する必要があります。
スポーツ障害の弊害は、たとえその時は良くなったように感じても、成長して大人になった時に後遺症として不調を現すからです。
長く息を潜めて、歳をとって回復力が落ちてきた時を見計らって悪さをしてくるとても厄介なものと言って良いでしょう。
スポーツ障害による後遺症の多くは、30代頃から徐々に現れてきます。
そして、その時には若い頃のような回復力はなく、加齢と共に痛んできている骨や筋肉、靭帯は昔のように日にち薬で自然と良くなるようなことはもうありません。
上の写真は子供の頃に発生した野球肘を放置してしまい、肘の屈伸制限が後遺症として残ってしまっている方です。
お悩みが強い場合には大人になってから手術が必要になる場合も多くあります。
上手い選手は休み方も上手
野球の試合をテレビで見ていると、時々
「本日、先発が予想されていた〇〇投手は肩の張りのため登板を回避しました」
というようなアナウンスを聞くことがあります。
1試合出場すれば何百万、何千万という大金を稼ぐプロの選手でさえ、体にほんの少しでも異常を感じればすぐに休養をとります。
それがたとえ、痛みのないごく軽い『張り』だけであったとしても、決して無理に出場したりはしないのです。
なぜかというと、プロのスポーツ選手たちは体のパーツが代えの効かない消耗品であること、また、ごく軽い違和感や不調が後に大きな障害や怪我に繋がる前兆であることをよく理解しているからです。
そして多くの場合、休養期間中にしっかりリハビリと施術を続け、最短期間でスポーツ復帰を果たします。
プロのスポーツ選手は、競技だけでなく、休養の取り方も上手なのです。
適切な休養と施術を受けるべき時期を見極める能力は、優秀なアスリートになるための一つの才能でなないでしょうか。
後々に後遺症を発生させないために今できること
子供のうちから、休養と運動後のケアを当たり前のように習慣付けることが大切です。
そのためには大人が、子供たちに休養とケアの大切さを正しく教育してあげる必要があります。
子供たち(選手)、保護者・指導者、施術者が、スポーツ障害に対して共通の認識を持って一つの目標に向かって足並みを揃えた時、個人のパフォーマンス、チームとしての結果は最良の形となって現れてくるものだと考えています。